- 管理栄養士の専門性が活かせる職場ってどんなところ?
- 管理栄養士は求められる仕事なの?
- 管理栄養士のやりがいってなに?
管理栄養士として病棟業務やチーム医療に携わっているみやよしです。
医療業界の管理栄養士に転職を考えているけど、本当に求められている職業なのか気になっていませんか?
実は、医療業界で管理栄養士の重要性が徐々に認められてきています。
なぜ認められていると言えるかというと、国が報酬という形で管理栄養士がいないと得られないものが増えてきているためです。
私は医療現場のプレイヤーとして働きながら、採用にも携わっている関係上、管理栄養士が不足してきていると実感しています。
そこで本記事では、医療業界の管理栄養士の転職で迷っている人に向けて、医療業界の管理栄養士にしかできない仕事内容や求められることを紹介します。本記事を読むことで求められることが明確になり、管理栄養士としてのやりがいが見つかるでしょう。
結論:医療業界では、管理栄養士がいないとチーム医療での報酬や栄養の知識、患者の満足度向上ができないので、管理栄養士が必要。
- 管理栄養士 主任
- 病院勤務歴 10年
- 栄養科の責任者
- 病院栄養科の採用担当
管理栄養士にしかできない仕事内容を解説
医療業界での管理栄養士の仕事は、他の職種でもできるんじゃないの?
病院は診療報酬、介護福祉施設は介護報酬として国から報酬をもらい成り立っています。
食事に関する報酬を国から貰う条件としては、常勤管理栄養士の配置が義務です。
報酬を得るために管理栄養士も専門的な仕事を求められるため、ここでは管理栄養士にしかできない仕事内容を解説していきます。
栄養指導
対象の患者に対して栄養指導をすることは管理栄養士にしかできない仕事です。
栄養指導の種類は複数あるため以下にまとめました。
個別指導 | 患者の状態により、指導内容を行います。 |
集団栄養指導 | 入院、外来の患者を対象にこちらで決めた題材で栄養指導を行います。 |
公開講座 | 一般市民を巻き込んだ栄養に関する情報を配信します。 日程を周知して、集まった人に対して情報提供を行います。 |
訪問栄養食事指導 | 通院ができない人に対して管理栄養士が在宅まで訪問して、療養に必要な食事の指導を行います。 |
指導にも上記のような種類があり、様々な形で栄養指導を行います。
栄養指導は、在宅復帰した人でも最適な食生活を行っていただくために、患者に合った食事を提案します。
生活スタイルにより、無理のない食事の提案をして食生活の改善をしてもらえるような指導が必要です。
栄養管理
- カンファレンス(会議)
- 栄養計算
- 栄養管理計画書
医師、看護師、薬剤師、リハビリスタッフ、管理栄養士で患者に対してどのような目標を設定して改善していくかのカンファレンスを行い食事内容の決定をします。
管理栄養士は、患者の栄養状態に対してどのような状況で対策をしているのか、どの職種でも把握できるように栄養管理計画書の作成が必要です。
栄養管理計画書は、状態の悪い患者に対して医師の指示により実施したものを記載していきます。
栄養ケアマネジメント
入所している高齢の利用者に対して栄養状態を把握し、低栄養の予防や改善を行っていくことを目的としています。
管理栄養士と医師、歯科医師、看護師及び介護支援専門員が連携をして栄養ケアマネジメントを行います。
栄養スクリーニング | 介護支援専門員と連携して、入所遅くとも一週間以内に、関連職種と共同して、低栄養状態のリスクを把握する。 |
栄養アセスメント | 管理栄養士は栄養スクリーニングを踏まえ、入所者毎に解決すべき課題を把握する。 |
栄養ケア計画 | 栄養アセスメントに基づいて入所者の栄養補給、療養食の適用、栄養食事相談、課題解決のための関連職種の分担などについて関連職種と共同して栄養ケアを作成する。 |
モニタリング | 栄養ケア計画に基づいて、低栄養状態の低リスク者は三ヵ月毎、低栄養状態の高リスク及び栄養補給法の移行の必要性がある者の場合には、二週間毎に適宜行う。 ただし、低栄養状態の低リスク者も含め、体重は一か月毎に測定する。 |
次にこれらのスキルが活かせる職場を紹介していきます。
出典:栄養マネジメント加算及び経口移行加算等に関する事務処理手順例及び様式例の提示について
管理栄養士にしかできない専門性が必要とされる職場を紹介
さっき紹介された仕事内容が活かせる職場ってどこがあるの?
管理栄養士は国家資格であるため、専門性が高い職場で働くこともあります。
栄養の知識を活用して栄養状態を改善していく職場は病院。
低栄養を防ぐために栄養状態を維持・向上させていく職場は介護施設など、医療業界は管理栄養士が活躍でき必要とされる職場が多くあります。
ここでは、とくに管理栄養士としての専門性が高く、必要とされる職場を紹介していきます。
病院での管理栄養士の必要性
患者の入院後、重要になってくることがエネルギーの摂取です。
なぜなら、必要エネルギーを確保できないと体力が戻らず、在宅復帰ができないからです。
そこで、患者が必要なエネルギーを摂るために、管理栄養士の献立知識や食材知識が必要とされます。
管理栄養士は、患者の状態や病院献立の成分値、使用食材を把握しているため、患者に対しての最適な食事の提案をすることができるので、患者や他の職種から必要とされています。
介護施設での管理栄養士の必要性
高齢者にとって一番避けたい症状は低栄養です。
低栄養になると感染症になりやすかったり、寝たきりになり、褥瘡(床ずれ)が治りにくくなったりします。
褥瘡ができてしまうと利用者にとってもつらい状況であるため、栄養ケアを行っていき常にチェックし改善していきます。
栄養ケアを行うチームのなかにはもちろん、管理栄養士も入っています。
栄養の知識を活用して、利用者の低栄養リスクを改善していくことで、必要とされる管理栄養士になります。
それぞれの施設でも管理栄養士と栄養士の役割が違います。
管理栄養士と栄養士の役割の違い
医療業界での管理栄養士と栄養士の仕事の違いって何?
- 管理栄養士は栄養管理
- 栄養士は給食管理
管理栄養士と栄養士の役割が大きく変わる業界は医療業界、特に病院で役割が異なります。
病院の管理栄養士と栄養士の仕事は栄養管理と給食管理の2点でわかれます。
ここでは、それぞれ管理栄養士の栄養管理に関わる役割と栄養士の給食管理に関わる役割を説明していきます。
管理栄養士と栄養士の仕事の違いについては、各業界で内容が異なるので以下の記事をぜひ、参考にしてください。
管理栄養士と栄養士の違い|両方経験している病院の責任者が徹底解説
管理栄養士の役割|栄養管理は多職種連携とコミュニケーションが重要
- 患者の状態を把握
- チーム医療
- 食事の提案
院内での管理栄養士の役割は、患者の状態を把握したうえで他の専門職の人たちの意見を聞きながら最適な食事の提案をしていくことです。
もちろん最初だけではなく、常に経過を追って回復していればそれに見合った食事を提案していきます。
そのためにも、多職種で連携をして情報の共有が必須です。
医師、看護師、薬剤師、リハビリスタッフなどの専門職の意見を取り入れながら、管理栄養士として最終的な食事を提案していきます。
栄養士の役割|給食管理で満足度をアップして病院の評判をあげる
- 献立作成
- 食材発注
- 調理などの厨房業務
給食管理は患者への食事提供から、食べ終わって食器を洗浄するまでのすべての業務のことを言います。
栄養士の病院での役割は、患者満足度を向上させて病院の評判をあげることです。
入院中の患者の楽しみは食事くらいしかありません。
栄養士は、食事で満足度を上げるために常に献立の修正を繰り返します。
また満足度を上げるだけではなく、安全で安心な食事の提供をするとともに、コスト管理や在庫管理に関しても調整していくことも求められます。
このように満足度の向上やコストを削減して、病院の健全経営や評判をあげることが栄養士の役割です。
栄養管理と給食管理は手段は違いますが、目的は患者を満足させて病院の評判を上げていくことでもあります。
管理栄養士は将来なくなる?需要は増えてきている
仕事内容や役割は分かったけど需要はあるの?
- 診療報酬改定による管理栄養士人数確保の強化
- 介護報酬改定による算定要件の強化
世間の管理栄養士の需要は増えてきています。
たとえば、診療報酬と介護報酬は国から得られる報酬ですが、常勤管理栄養士がいないと算定できないものもあります。
上記の図からも平成から令和にかけて栄養関連の報酬が増えていることがわかります。
診療報酬のなかに入院時食事療養加算やNST加算等があります。
診療報酬は2年に1度、介護報酬は3年に1度改定されますが、改定されるたびに管理栄養士が必要になる項目が増えています。
最近では、病棟配置の強化や栄養ケアマネジメントの強化により、管理栄養士が以前よりも必要になる傾向にあります。
その背景には、今までの管理栄養士の取り組みにより、栄養が治療に必要不可欠な要素であることを認めているということ。
つまり、国として管理栄養士は医療業界に必要な存在だと再認識しているということです。
出典:厚生労働省 第3回チーム医療推進方策検討ワーキンググループ
以前までは、必要な時に病棟に行き用事が終わったら自部署に帰って仕事を再開する形でした。
しかし、今後は自部署に戻らず病棟に常駐して多職種連携をはかることを求められています。
報酬が改定されるたびに病院や施設に必要な管理栄養士の必要性や人数は増えてきているので、医療業界において需要が高まっています。
病院管理栄養士にしかできない求められる仕事
病院ではメインの仕事以外にどんな仕事を求められるの?
管理栄養士の仕事内容や役割を紹介してきましたが、それ以外にも患者から食事のことで求められることがあります。
ここでは、患者とコミュニケーションをしていく中で、求められる仕事について紹介していきます。
患者と医師の橋渡し
患者は医師に聞きたいことがあっても、時間が取れる医師ばかりではないため、食事に関することは管理栄養士が取り持つことが多いです。
- 嗜好による食事相談
- おやつは食べてよいか
- 食事に対する意見
食事の決定は医師が行いますが、その前に管理栄養士が患者と話している中で、相談されることが多い内容です。
栄養管理を行っていて問題がなければ、医師に提案していきます。
クレームや意見を貰うこともあります。
食事の代替案を提示できる
患者や利用者は嗜好により食べられない食材があります。
そんなときに代替案を提示できるのが管理栄養士です。
食材はものにより、成分値がバラバラです。
そのため、患者に一番適した食材を選ぶことは通常困難ですが、管理栄養士は食材選定の知識があるため他の職種から求められます。
食材の提案力は栄養指導でも活躍します。
病院歴8年の私が感じる管理栄養士にしかできない仕事のやりがい3つ
実際に働いている人のやりがいってどんなものがあるの?
管理栄養士のやりがいは、働く環境により変わります。
よく学生見学を対応していると「仕事のやりがいって何ですか?」と聞かれることがあります。
私が思う仕事のやりがいは、叶えたい目標に向かって、少しずつでも成功を積み重ねていくことだと思っています。少しずつ目標に近づいていると実感できたときに「やりがい」を感じます。
ここでは、そんな仕事の中で感じる管理栄養士ならではの仕事のやりがいを紹介していきます。
患者に喜んでもらえる|食事提供のモチベーションアップ
入院中に楽しみにしていることは食事です。
患者が食事を食べている様子を見に行くことがあります。
その際に「今日のご飯美味しい」と喜んでもらえることで、もっと喜んでもらうためにイベントや行事食を頑張ろうと思えます。
とくに、給食を直営で運営している病院や施設の管理栄養士は、自分たちで考えた献立であるため、やりがいに繋がるでしょう。
知識を提供して患者の役に立てる|栄養の相談で笑顔になる
管理栄養士は、患者から栄養について相談されることが良くあります。
その際に患者が求めている答えをわかりやすく伝えることで、笑顔になってくれると「自分でも役に立った」と思いやりがいに繋がります。
管理栄養士としては当たり前の知識でも、一般の人からすると初めて聞くことも多いため、ちょっとしたことでも喜ばれることも多いです。
仕事の目標が見つけやすい|やりがいを見つけやすい
私が考える管理栄養士の仕事のやりがいは「叶えたい目標があり、目標に近づいていると実感できたときにやりがいを感じる」とお伝えしました。
あなたが管理栄養士になりたいと思ったときに、どんな管理栄養士になりたいかというのも思い描きませんでしたか?
管理栄養士は専門職ではありますが、どんな仕事をしているか想像が付きやすい職業だと思います。
研修も行っているので想像しやすいと思います。
そのため「こんな管理栄養士になりたい」と思う理想を目標にすることで、そこに向かって
仕事をしていくことで、やりがいに繋がるはずです。
管理栄養士の年収はどれくらい?|平均368万円
医療業界を含めた管理栄養士の年収が知りたい!
国家試験に合格して、資格を取得したらどうせなら良い給与がもらえる職場で働きたいと思いませんか?
管理栄養士の年収は250〜450万円と幅が広くなります。
厚生労働省の令和3年度の賃金構造基本統計調査によると管理栄養士37歳で平均368万円になります。
ここでは、管理栄養士の年収の高い業界をランキング形式で紹介していきます。
出典:令和3年賃金構造基本統計調査 結果の概況|厚生労働省 (mhlw.go.jp)
1位|行政450~600万円
- 地域保健センター
- 保健所
- 学校の先生(栄養教諭)
行政の管理栄養士は国や都道府県からの採用でもあるため就職先として、とても人気です。
特徴としては、地域住民の健康増進として、セミナーや健診などがメインの活動です。
食品を扱う企業に対しても、担当が実際に足を運び監査を行い常に衛生面など、安全な環境で食品が作られているか確認を行います。
平日勤務であり、土日祝日休みなので、休日も安定して高収入が得られます。
応募するには年齢制限があるため、注意が必要です。
2位|大手食品メーカー400~600万円
- 営業
- 開発
- 製造
- 企画
大手メーカーは高収入と休日が安定しているため人気です。
メーカーは管理栄養士だけではなく、一般の大学・短大も狙っているため競争率が高くなります。
管理栄養士の場合は、営業社員として入ることが多く、自社の栄養剤や食品を関係のある職場に売り込みに行きます。
営業からは試験を受けることで、他の部署に異動できるようです。※当院明治営業担当より
3位|病院・クリニック300~400万円
病院・クリニックは、管理栄養士の中でも人気でありながら、求人も多くある業界です。
栄養学に興味があり、患者の病気を治して役に立ちたい人も多いのではないでしょうか。
医療業界は、転職市場でも需要のある業界です。
管理栄養士は医療業界で需要があるため、実務経験が少しでもあれば色々と選択肢を増やすことができます。
しかし、臨床の現場では日々の勉強が必要なため、高度な技術や専門知識を身に着けるため経験を積んで患者の役に立てるように努めましょう。
4位|保育園250~350万円
保育園は、食育の分野で子どもたち一人ひとりに食事の大切さを教える仕事です。
求人情報も多く、常に募集をされています。
職場では、調理師と一緒に給食を作ることになります。
食材発注や調理、おやつ作り、アレルギー、親への食育アドバイスなどを行います。
5位|介護福祉施設260~310万円
介護福祉施設の特徴は、職場単位での管理栄養士の人数がまだ少ないことです。
そのため、委託給食会社の栄養士や調理師と連携して利用者の満足度を上げていきます。
管理栄養士は栄養ケアマネジメントを多職種と行っていきつつ、委託給食会社とも連携をしていかなくてはいけないため、タスク管理が大切です。
出典:管理栄養士の給料・年収はいくら?職場別の平均給与を公開|マイナビコメディカル (mynavi.jp)
管理栄養士にしかできない仕事まとめ
医療業界での管理栄養士にしかできない仕事、役割、求められることを紹介してきました。
管理栄養士の専門性を活かす職場には、病院と介護施設があります。
管理栄養士でないと解決が困難なことや、患者と医師の橋渡しになることも重要な管理栄養士の仕事です。
自分が目標とする管理栄養士に近づくためにも、スキルを磨き、やりがいに繋げられる働き方を目指しましょう。
将来的に自分の職場だけではなく、地域のために何ができるかに目を向けることが重要です。
管理栄養士の全体像を知りたい人は、管理栄養士について網羅的に紹介している記事があるのでぜひ、参考にしてください。