病院管理栄養士の仕事は大変なの?
業務の内容や流れを知りたい
職場で働く人たちはどんな悩みを持っているんだろう
こんな疑問にお答えします。
病院管理栄養士の仕事内容ってネットで調べても概要をサラッと説明されているだけで内部のことについては説明されていないから転職を考えていても一歩踏み出せないですよね。
私も家電小売業からの業種チェンジする際に管理栄養士の情報を得ようと思いましたが具体的な内容はなかったので苦労しました。
今回は病院栄養科の責任者の私が管理栄養士職員との定期面談でよくあがる悩み等の内部事情や実際に私が行ってきている仕事内容から得た知見を元に病院管理栄養士の大変さや仕事内容などを紹介していきます。
当院は管理栄養士7名栄養士4名の回復期、厨房業務も直営で行っている病院です。
この記事を読むことで病院管理栄養士がどんな流れで業務についているのか理解できます。
管理栄養士について詳しく知りたい人は、詳しくまとめた記事がありますのでぜひ、参考にしてください。
管理栄養士とは?|面接官が管理栄養士の求められる3つの仕事内容を徹底解説
- 管理栄養士 主任
- 病院勤務歴 10年
- 栄養科の責任者
- 病院栄養科の採用担当
病院管理栄養士の仕事は本当に大変なのか?実際に現場で働く職員に聞いてみた
病院の管理栄養士の仕事は大変か楽かで言えば大変です。
私が考える病院管理栄養士が大変と感じる場面は、他部署との交渉です。
患者第一とはいえ、患者に時間を割くためには自分の作業時間を作らなければなりません。
しかし、そのことは他の職種も考えていることは同じなので、1人の患者に対して他の職種でもできることはそっちに回したいと思うことが多いです。
そのため、自分の時間を作るために看護師やリハビリスタッフに仕事を任せられるかの交渉が大変と感じます。
できれば自分で全部やりたいけど、残業がやばいことに…
これは、私が病棟担当だったときに感じたことですが、下記に当院の現役病棟担当に、面談の際に大変なことについての相談内容を紹介していきます。
病院管理栄養士の大変だと思う仕事内容の特徴
- 栄養指導で提案通りに改善してくれない
- 栄養管理するにも食事を食べてくれない
- クレームの多い患者にあたると心が折れる
食事をあまり食べてくれない患者さんが多くて困ってます。
食べないと数値も改善しないしリハビリもできない、
献立の改善としても簡単じゃないし、そのうえクレームの多い患者だとこころが折れそうです。
食事を食べてくれない患者は、普段から自分の好きなものを食べてきた人が多いです。
そんため、糖尿病などの疾患を抱えるようになるため、食事の教育は必要ですが大変です。
特に茹でた野菜や冷凍の魚は、人気がないため一気に献立変更するのは大変なので、人気のない魚料理だけ違う料理に変更などの対策が必要です。
病院管理栄養士が抱える課題
- 患者満足度の向上
- 管理栄養士としての付加価値を上げていく
食材費の予算を調整しながら、患者満足度向上が課題と言えます。
その改善としては、管理栄養士が食事以外でも付加価値を提供していくことだと考えています。
患者を満足させるには、良質な食材やレシピとそれを作る人員が必要です。
しかし、そこにはコストがかかるため、理想論だけではどうしようのない経営の壁があります。
予算を維持しつつ、良質な給食管理を行うには限界があります。
管理栄養士が患者と接していくことで、患者の不満を軽減させるような栄養管理が求められています。
病棟訪問型から病棟配置型に変わっていますが、その流れを利用して患者と接する時間を増やし、コミュニケーションをとって付加価値を上げていきましょう。
食事の話題は患者も興味があるので、まずは良好な関係づくりを付加価値としましょう。
病院管理栄養士の仕事の難しさについての評判
管理栄養士の仕事は、実際に簡単ではありません。
特に、塩分の摂りすぎや食生活の乱れなどは、患者の今までの私生活の積み重ねなので、患者が本気にならないと難しいでしょう。
それでも管理栄養士は、正しい食生活を実行してもらうために少しずつ、改善をできるような道しるべを提案し続けていかなければなりません。
その提案を根気強くできるかどうかが、難しいか意外とそうでもないかの違いになってきます。
病院管理栄養士が抱えるストレスとは?病棟担当に聞いてみた
- 人間関係のストレス
- 仕事のストレス
- 責任に対する給与のストレス
聞き取りの際にこのような声がありました。
順番に紹介していきます。
人間関係のストレス
病棟担当として困っていることはありますか?
病棟の看護師主任に色々仕事を頼まれて断れなくて困っているんです。
人間関係のストレスは自部署でもでてきますが、他部署との関係づくりに苦戦している職員も多いです。
特に、他部署の役職者から患者さんについて、お願いをされると断りたくても断り切れない場合があります。
任された仕事をやることで、想定外の残業が増えることによりストレスになります。
複数回同じようなことが重なるとストレスが溜まってしまいます。
改善案としては、こちらもお願いごとを用意しておきましょう。
患者のためにお願いされたことなら、こちらも同じような対応をすることで、負担を増やすだけではなくなります。
その件はやっておきます。その代わりではないですが、こっちの患者さんの〇〇確認していただいてもよろしいですか?
仕事のストレス
業務上不満などはありますか?
なんで私がこんなに頑張っているのに、あの人はあのくらいの仕事量なのかちょっと不満です。
自分の仕事量と同僚の仕事量を比べて不満になり、ストレスになってしまう人もいます。
たとえば、同じ病棟担当なのに栄養指導件数が自分の方が見るからに多い場合、おかしいと思うことは当然です。
人により能力も違えば、モチベーションも違い、同じ機能病棟でも担当医師により入院患者の性質も違うので難しい問題です。
改善案としては、昇給アップの交渉ができないか確認してみましょう。
自部署の目標に対して、あなたが貢献している場合、目標達成に貢献していると考えらえるので昇給アップの交渉材料になります。
自部署の目標に対して、自分に割り当てたられた数字を確認してみましょう。
責任に対する給料のストレス
仕事に対する不満やストレスは溜まってませんか?
患者の健康を管理したり、アレルギーに注意したり大変なのに責任と給与が合わないと思います。
管理栄養士は医療に携わる割に、給料が低いと言われています。
日本人の平均年収が433万円であることを考えると、この年収より低い人の方が多いでしょう。
改善策としては、転職があります。
- 自分の給与水準は周りと比べてどうか
- 自分を今の施設より評価してくれる施設はどのくらいあるか
あなたのスキルに対して、今の職場より評価してくれる施設があれば、転職も視野に入れてみましょう。
責任者としては、自部署の職員に転職は勧められない…
管理栄養士の現場(厨房)の雰囲気はどう?現場の人に聞いてみた
管理栄養士は給食管理を行うこともあります。
当院では、管理栄養士を含め、栄養士・調理師を中心に厨房業務を直営で行っています。
そのため、各職種との面談から厨房の雰囲気について聞いたことを紹介します。
ちなみに当院は、回復期と療養を併設している病院です。管理栄養士と栄養士で、急性期経験者5名いますので、回復期と急性期の特徴と共通点もあわせて紹介します。
急性期の現場の特徴
急性期の現場ってどんな雰囲気でした?
時間がないので、ずっと走り回っていた気がします
急性期の現場の特徴は、入退院の入れ替わりが激しいところです。
さらに食事の変更件数も多いため、盛り付けの時間は気を抜けない状況がほとんどです。
配膳ギリギリまで食事のチェックを行い時間通りに提供するため、忙しい時間帯はピリピリしている雰囲気があります。
忙しく雰囲気が合わない人もいますが、1年でも続けることができれば、他では手に入らない調理や盛り付けスキルを身に付けることができます。
回復期の現場の特徴
当院の現場はどうですか?
現場は急性期に比べて余裕があけど、自分のフリーの時間がもっと欲しいです。
回復期の現場の特徴は、1人が多くの業務を兼任することです。
回復期は、急性期に比べて適正人数が少ないことが多いため、1人あたりの業務量が増えます。
そのため、現場作業を早く終わらせて、自分の発注や書類作成などの仕事を行うなどスケジュール管理が難しくなります。
現場の雰囲気としては、急性期ほど忙しくありませんが、後に自分の仕事が控えているため、時間がない時は殺伐とした雰囲気になることもあります。
病院管理栄養士がつらい理由
職員面談は年に2回ボーナス月に行います。
その際に管理栄養士の抱える悩みや、やりたいこと、目標の設定などを行っていきます。
当院には7名の管理栄養士がいるためよくある悩みについて紹介していきます。
病棟の医師・看護師とうまく連携がとれない
医師や看護師と情報共有を行うことは必須であり避けて通れません。
しかし、時間帯によっては相手が忙しかったり、こっちの都合が合わなかったり、休日や夜勤など大切なことなのに時間が合わずに後回しになることがストレスになってしまう管理栄養士も結構います。
時間が合わないのと同じくらい医師・看護師と相性が合わないという相談もよく貰います。
看護師は忙しいと冷たく感じるかもしれませんが忙しい時間帯を把握して回避しましょう。
意見の多い患者の対応が大変
管理栄養士は患者の喫食が悪ければ話を聞いて改善をしていく必要があります。
なぜなら、喫食が悪いままだと疾患の回復にも影響があり、その分社会復帰にも時間が掛かってしまうためです。
提供している給食に対して「カツカレーが食べたい」「レシピのパターンを増やしてほしい」といういご意見に関してはレシピの改善検討材料として取り入れる余地があります。
しかし、何でもかんでもクレームを入れる患者には慎重な対応が求められるためそういうときの対応の悩みをよく聞きます。
何回もの意見やクレームを頂いているうちにこのパターンのクレームにはこの対応をするといった自分なりのやり方がわかってくるため、最初のうちから少しずつ対応していくと後に大きいクレームも対応できるようになるでしょう。
多職種との連携やスケジュール管理がうまくできない
スケジュール管理はとても大切です。
管理栄養士はNSTなどのチーム医療のカンファレンスに参加します。
NSTはとくに管理栄養士が主導になって担当の職種を集めるため、スケジュールを合わせることが手間です。
また、栄養管理をしていると患者のことで担当の言語聴覚士や看護師と相談したいけど相手がどこにいるかわからない、電話で折り返しても今度は自分が手を離せず対応できない、というような場面がある悩みが良くあがります。
相談しないとその仕事は先に進まないため、時間があるのに先に進めないため不安になります。
予めどの時間帯が空くか聞いておくのも良いです。
コミュニケーションスキルの向上が難しい
病院管理栄養士には患者から情報を聞き出すスキルが必要です。
うまく聞き出すことができずにこちらの提案を一方的に伝えてしまうと良い関係づくりができません。
そのため、どうしたらうまくコミュニケーションをとれるか悩んでいる職員もいます。
いろんな仕事を任されてくると他の仕事もしなくてはならないため、1人の患者にそんなに時間を使えないという考えになりがちです。
患者の重症度から優先順位を決めて1週間のスケジュールを立てておくことで重要度の高い患者に対してじっくりと対応ができるように心がける必要があります。
上記に現役管理栄養士の悩みをあげましたが、次に対処法を紹介します。
対処法は以下の通りです。
- 職場環境の改善を図る
- 新しい職場に移る(異動・転職)
対策としては、上記の2点があげられます。
ストレスの原因を改善していくためには、あなた自身がそのストレスと向き合い、行動していく必要があります。
ストレスの原因をピックアップして改善可能か不可能か、不可能であれば職場を変える選択肢として異動か転職も視野に入れながら準備をしていきましょう。
人間関係が複雑
ストレスの改善が不可能な理由に人間関係があります。
よくある人間関係が複雑になる理由は以下の通りです。
- 仕事を覚えられなく自分に原因がある
- 原因がわからないが、なんだか対応が冷たい
- 意見が合わず対立
仕事を覚えられなく自分に原因がある
人間関係は、他人が介入することができないので改善がとても難しい問題です。
仕事の失敗は仕事で取り返すしかないので、自分に原因がある場合は日々の勉強を欠かさず業務内容を見直し、改善していくしかありません。
原因不明でなんだか対応が冷たい
原因がわからない場合は、第三者に意見を聞いてみましょう。
パート職員や同僚などに聞いてみると意外と原因が自分にある可能性もあります。
対象人物に対して失礼なことをしていないか、言動を振り返ってみましょう。
意見が合わず対立している
意見の対立で正解がない場合、どちらかが折れる必要があります。
対立していることにストレスを感じているのであれば、自分が折れることも大事です。
病院管理栄養士が大変さやつらさを解消する方法
大変さやつらさを改善する方法は1人で悩まないことです。
悩みを解決するには必ず第三者に相談する必要があります。
なぜなら、あなた1人で悩んでいてもどこに原因があるかわからないからです。
わかっているつもりの場合もあります。
ここでは、相談する相手はどんな人がいるのか紹介していきます。
SNSで他の病院管理栄養士と情報交換
- 業務内容
- 人間関係の相談
- 臨床などの技術的な方法
SNSで他の病院で活躍している管理栄養士はどのような対応をしているか聞いてみましょう。
SNSは管理栄養士の人数も多く、対面するわけではないので聞きやすい媒体です。
自分の悩みも第三者目線で相談してみましょう。
もちろん、私でも大丈夫ですよ!
@kanri_saiyou
栄養士会を利用して第三者の施設管理栄養士にも意見も聞いてみる
SNSが苦手な人は実際に働いている人に会いに行きましょう。
栄養士会は年会費はかかりますが、管理栄養士・栄養士であれば地域の栄養士会に入会することができます。
栄養士会では、主に勉強会や困ったことの相談会のようなことを行っています。
私が入っている栄養士会では、病院は病院でグループになり困っていることの話し合いをすることが多いです。
その場で、すぐ解決とはいかない場合もありますが、他の施設の管理栄養士と知り合いになり話を聞いてもらうのも良いでしょう。
自部署の責任者または総務に相談する
一番身近な上司である責任者に相談するか、そもそも責任者が原因であれば、総務課で相談は乗ってくれます。
なぜ責任者や総務課かというと、離職率を低下させたいと思っているからです。
そのため、真剣に相談すればその分真剣に取り組んでくれます。
私自身、相談されて職場をかき乱すパートさんに辞めてもらった経験があります。
人間関係はすぐに解決できる問題ではありませんが、誰かに話を聞いてもらうことで今後の充実した栄養管理に取り組むことができるでしょう。
病院当院管理栄養士の1日スケジュール
時間 | 仕事内容 |
---|---|
8:30~ | 業務開始 入院患者情報の確認 入院診療計画書の記入 |
9:00~ | 入院患者の喫食等の情報確認、介入 |
10:30~ | 入院指導、報告書作成 |
12:00~ | 病棟ミールラウンド、担当患者の喫食状況を確認、言語聴覚士と情報を共有 |
12:30~ | 下膳、洗浄作業 |
13:30~14:30 | 休憩 |
14:30~ | 患者の喫食率確認、補助食品の調整、発注作業、帳票作成などの事務作業 |
16:00~ | 給食管理システムに患者情報の入力 |
16:40~17:30 | 遅番業務の準備、食札確認、時間になったら帰宅 |
その他、心臓リハビリテーションやNST担当は上記に加えて業務を行います。
担当している業務により順番、内容は変わります。
当院の病院管理栄養士の残業と休日数
当院管理栄養士の残業時間と休日とのワークライフバランスを紹介します。
当院栄養科の平均残業時間
当院の年間平均で月に1人あたり10時間の残業があります。
残業内容は担当患者の栄養管理や指導、洗浄要員が足りなければ予定された残業として遅番を行います。
基本的には期限が設けられている仕事が終わらない場合に調整のため残業をするという流れです。
年間の休日回数とワークライフバランスについて
休日は月に9~10回と有給となります。
勉強などに使える時間は私自身、栄養士として病院に勤務しながら管理栄養士を取得することができたので自己研鑽や自己啓発する時間はあると考えています。
また、小さなお子さんがいる職員は時短勤務として調整でき、お子さんの体調によっては時間給として途中で帰宅することができます。
このように仕事が終わった後のプライベートの時間に関しても確保できます。
お子さんと一緒の時間を増やすことでプライベートの時間を楽しみましょう。
病院管理栄養士のやりがい
病院管理栄養士のやりがいは自分が介入することで改善していると実感できるときが一番のやりがいです。
承認欲求は誰でも持っているものなので、自分が関わることで多職種や患者から感謝されることはやりがいに繋がります。
回復期の病棟配置
病院の種類によっては管理栄養士が専任で病棟を担当することによって国から診療報酬を貰うことができます。
病棟担当になればその担当現場に常駐することで患者の細かな情報が入るため対応しやすくなり、多職種との連携も取りやすいためやりがいにも繋がりやすいでしょう。
病棟に常駐できる管理栄養士になれば、栄養管理をしている立場から、専門性の高い臨床の知識を患者に提供できます。
適切に対応すれば数値が改善される
入院患者で重症度の高い患者に対して自分が仮説を立てて医師や看護師に提案、実行することで改善していくと自分の考え方が合っていたとなるため、やりがいに繋がることがあります。
自分の提案が通り、患者の病気が回復することで、自分自身の成長の確認と存在意義を見出すことができます。
今回は回復期の特徴からやりがいを紹介しましたが、急性期では外来栄養指導での実績や教室など様々なやりがいに繋がっていきます。
病院管理栄養士の大変まとめ
- 病院管理栄養士が大変に感じる理由
- 病院管理栄養士の仕事内容
- 1日のスケジュール
- よくある悩み
- 残業と休日のワークライフバランス
- 病院管理栄養士のやりがい
病院管理栄養士は大変かというと大変です。
しかし、管理栄養士の資格をフルに活かせるのは病院でしょう。
食事では患者の病態を治療すことはできませんが、栄養の知識から支援することは可能です。
また、患者以外にも自分の家族などにアドバイスできることも魅力の1つです。